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怖い話(というか不思議に思った話)は続きを読むに。

「視えると言うこと」

以前住んでいた家でのこと。

夕食後、窓から見える電柱の方を指さすと
「あそこに人が立ってる。何してるんだろ」
というので、母がそちらを見るが誰も居ない。

田舎の住宅街なので暗くなると人気がない。
ましてや待ち合わせをするにも不自然な場所だ。

不思議がる母に父は「立ってるだろ?」
と何度か言っていたが、やっとあれが人には見えないもの
だと気付いたらしくそのあと口を閉ざした。

父は幼い頃からそういう他の人には見えない存在を
視ることが出来たという。

幼いときからそういった話を母や本人から聞いていたので
私はそういうものを視える人が居るというのを自然に
受け入れていたが、自分から視えるとか言う人はだいたい
胡散臭いと思っている。
本当に視える人は、視えることがあまり嬉しく思っていないし
気味が悪いらしい。

ひとそれぞれだが、はっきりと見え、かつそれが生きている人と
変わりなく見えるというのが生々しいとおもう。
しかも厄介なのが見えると向こうが認識すると寄ってくるのが
またタチが悪い。

父に続き視えるのは我が家では姉である。
姉は20歳を過ぎるまでは、そういう厄介なものに悩まされていた。
特に多感なお年頃の時は酷かったらしく、以前記した体験も
その頃の話である。

姉は目が少し悪く裸眼で過ごせなくもないが、ちょっと遠くを見るのは
不便なほどだった。

そんなある日高校の近くの道を友だちと歩いていると
遠くに黒っぽい何かが宙を浮いていたらしい。
なんだろう?と思って目を凝らすと。
それは時間も距離も無視し、急に迫ってきたという。
(あ、やばい!)
と思ったが遅かった。

それは中年の男の生首だった。

そいつはニヤニヤしていたという。
怖いのと後悔した気持ちですぐに俯いて見ないようにしていたが
それは近くをフワフワ浮きながらしばらくいたらしい。

「絶対視えないほうがいいよ」
と、姉は今でも力説する。
何も出来ないのに憑いてこられるのは堪ったものではないし
気持ち悪いので嫌らしい。

あと、視えたり音だけだったり、姿も気配も無いけどある一定の場所で
地面がグニャグニャしてたり、気持ちが悪くなったりもするらしい。

まったく聞こえないし視えない私だが実は最近、あれはもしや?
という体験をし始めた。気のせいだと思うようにしてるし実際
見間違いか何かだと思うのだけど、いい歳をして急に視えるように
なったら洒落にならないらしい。
(先日、稲川淳二さんの怪談ナイトを見に行ったのだが、そのとき
急に視えるようになるとヤラレるらしい。視力ががくっと落ちたり
体に不調を感じたりするという。恐ろしい話である。)

さて、私の話に戻るが、最初に見た不思議なものは
夜間に車を運転して見かけたものである。

それは寒くも暑くもない季節で、霧も発生していないのにライトに浮かんだ
路面に一ヵ所だけ「湯気」のようなモヤモヤしたものがあったのである。

排水口も何もないアスファルトの地面。そこの一部分だけに湯気のような
煙のようなものが立ち上っている。大きくはない。

なんだろう?と思ったが何らかの自然現象(としても不自然だが)と思い
自分の胸にしまっていた。が、それはこのあと何度か見かけることになる。
やっぱり湯気が上がるような穴も熱もないのに不気味であった。

それはほんの序章だったのだが、今度は普通に見かけたものの話だ。

今年の1月か2月の寒い時期、凍った路面を気をつけながら運転していた
時のことだった。
視界の端に、おっかなびっくり歩く老人女性の姿を捕らえていた。
氷でずるずるなので、そういった歩き方をするのは自然だが老人という
こともあって内心転ばないといいがと思っていた。

心配になってチラッとそちらを見ると。

居ないのである。

さっきまで視界の端にいた人が一瞬で消えるわけはない。
ましてや凍った路面である。若かろうがあり得ないのだ。

まさか。と思った。
しかし今まで一度だって視たことなど無いのだ。
だから気のせいだ。と思った。

しかし、おかしいのだ。
なぜ視界の端程度なのに、老人女性と判ったのか。
服の色は真っ黒で、でも防寒着だと判る膨らみ。
しかし顔は判らない。黒い服装で危なっかしい歩き方だけで
なぜ女性と判ったのか。

そのときまたしても稲川淳二さんの話を思い出す。

「幽霊って顔はっきりしないことが多いんですよ。」

まさにその通りだ。
その話を聞いたとき改めて戦慄したのは言うまでもない。